僕を埋め尽くす秘密
バイでリバの♂が恋愛仕事人生等に悩みながらも真面目に生きてるよ

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別日1
破局の日のこと。

およそ2週間ぶりの再会だった。
それまでどうにか週1ペースで逢えていたのに
1週間丸々逢えなかったから、
僕は逢えるのをとても楽しみにしていた。
恋人同士なんだから、当然Hも込みで考えてた。

あの話もしよう、これも言っておこう、
今日はあれをやろう、これは出来るかな、
そんな明るいプランばかりが頭と胸を埋め尽くしていた。
彼氏の車と姿が視界に入る瞬間が待ち遠しくて
そわそわ感も止まらなかった。

顔を見て、いつもの笑顔に安堵を覚え
助手席にすっと乗り込みまず抱きついてキスをした。
彼氏もこの時は照れ臭そうな笑顔だった。

「今日はどうする?」と早速本題。
お泊りを疑うことなく期待していた僕は
「今日はホテルに行けるよ」と嬉しそうに語ってた。
そして彼氏の顔が戸惑った。

「今日はちょっと無理なんだけど~」
「何で?泊りがダメなら休憩でもいいけど?」

「体調が良くないから、ごめんね。」
「じゃあ本番は無しでもいいよ?」

「う~ん、Hは今日は無理なの、ごめんねぇ。」

この瞬間から何かがおかしいと感じていた。
体調が悪いのもそういう気分になれない日があるのも
僕にだって勿論あるからわかる話だったけど、
上手く言えないけど嫌な予感がしてた。
隠し事をされてるっていう雰囲気を感じて。

とりあえず2人で食事に行くことにした。
僕は初めて訪れた店だったけど、
彼氏は以前から知ってる店のようだった。

食事中の会話はいつも通り、何もおかしくなかった。
僕を嫌いになったわけではないことを、その時に悟った。
僕の中に2種類の危惧が生まれた。
どっちだろう、確かめられずにはいられなくなった。

僕の知らない時間、仕事かプライベートで何か
大きなトラブルか心労を抱え込んでいるのかな?
それならまだいい、彼氏の不幸を喜ぶのも申し訳無いが
僕にとってはまだ嬉しい展開。

もしそうじゃなかったら?そっちを考えると不安で胸がざわつく。
心掻き乱されてとても落ち着いてなんていられない。
話してくれるのを待ってる余裕も持てないくらい、
考えるだけで不安が過ぎって焦りが止まらなくて。

「ねぇ、何で今日H出来ないの?」
「さっき体調が悪いって言ったでしょ?」

「どんな風に悪いの?どこが?」
「何でそんなこと聞くの?」

「何ですぐに言わないの?言えないの?」
「しつこいなぁ、もう。」

どちらも質問に質問返しで一歩も譲らない。
車という狭い密室の中で刺々しいクエスチョンが飛び交う。
次第に棘の鋭さも増していき、気まずい空気が充満する。

だっておかしいだろ、久し振りに逢えたのに。
ずっと逢うの我慢しててさ、普通はHしたくなるもんじゃん?
相手のこと嫌いじゃなかったらさ、
他にあるとすれば特別な理由しか考えられないよ。

何か深刻な話なの?それとも嫌いになったの?
僕の質問責めは容赦無く続いた。
冷静な今思い返すと、相当しつこくて痛い奴だった。
お陰で白状してもらえたけどさ。

抗生物質の薬、飲んでるんだって。
クラミジアになっちゃったって。
その病気知ってるよ、僕もなったことあるから。
聞いた瞬間、僕の胸に何かがストンと落ちた。

「染されたの?」
「うん。」

「どうして?」
「ごめんなさい。」

「謝らなくていいから、正直に言えよ。誰?」
「ゲイバーで知り合った人。」

「いつ?」
「先週の頭くらいに。」

彼氏は少し前から、ゲイバー通いの遊びを覚えていた。
僕には内緒で、1人で。
そこで意気投合した男とその夜限りの、なんてことが
2~3回はあったって。本当はもっとあったかもね。

その内の1回で失敗したってわけか、
遊びで火傷してちゃ世話無いね、同情の余地も無いや。
でもクラミジアでまだ良かったじゃん?
もっとヤバイ病気もあるんだし。

彼氏はずっと謝っていた。
ごめんねごめんねもうしないから、と繰り返し。
こっちこそ申し訳無い、その声は僕には聞こえない。

もう聞くことも話すことも無くなった僕は
信号待ち中の車から躊躇うことなく降りて
振り返らずに真っ直ぐに早足で歩いた。
後ろ髪なんてものも綺麗サッパリ断ち切って。
彼氏がその後どうしたのかも全然知らない。

歩く途中、涙がポロポロ零れて止まらなくなった。
ポロポロからボロボロになり、ボタボタになり、
雫が流れる一筋の滝になり、前が見えなくなった。

目頭の熱さにやられてこめかみまで痛くなった。
鼻の頭にツンと激痛も走った。
口元も歪んで、正しい形に留めておけなくなった。

交通量も多い車道の脇に伸びる広い歩道だった。
暗い冬の夜とは言え歩行者だってちらほらいた。
幸い家までは真っ直ぐ歩けば帰れる距離だった。

でも、大の男が独りで号泣しながら歩くなんて
プライドの高い僕には屈辱的でしかない。
意地と理性とプライドだけはまだ残ってた。

どこか泣ける場所を、と本能的に探した。
歩道から横に伸びる狭い路地を見つけた。
素早く隠れるように路地に入り、路地の少し先に
小さな駐車場を見つけ、一直線に駆け足。

狭いコインパーキングに並ぶ車と壁の隙間に
潜り込み、しゃがみこみ、声を殺して泣きまくった。
ここで涙を全部流し尽くしておきたかった。
家に帰れば2人の友と顔を合わせなくちゃならないから。

悲しかったけど、それよりも悔しかった。
浮気されたこともムカついたけど、
少しどこかで仕方ないかと諦めもあった。
最初から、始まる前から頭の片隅に潜んでいた不安。

自分の至らなさ、未熟さにとにかく腹が立った。
シミュレーションでは許せるような気がしてた。
実際やられてみなきゃわかんないもんだね、
僕は全然許せなかった。一気に冷めてしまったし。
自分が思う以上に、僕は器の小さい男だった。

何がダメだったのかと自分に問い質しながら泣いた。
何がダメって、全部ダメだったに決まってる。
男の自信なんてものは欠片も残さず砕け散っていた。

沢山の悲しいこと、色んな悪いことを考え過ぎて
頭が更に痛くなった。
頭に血が巡り、涙の残量も減って呼吸も落ち着いた。
顔の肌を刺す寒さに気付き、自分が冷静さを
取り戻せたことを実感した。

とりあえず、早く家に帰ろう。

テーマ:日記 - ジャンル:恋愛

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