僕を埋め尽くす秘密
バイでリバの♂が恋愛仕事人生等に悩みながらも真面目に生きてるよ

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朝靄1
いつも通りの仕事終わりの朝だった。


遠くが薄い白を広げ真上は昼より濃厚な青、
見える上全てが夜朝の太い境界線の空に
一日の勤めを終え眠ろうとする夜の街。
僕はその日店に来たサトルと共に歩いていた。

「一緒に朝飯行かね?」

彼が僕の店に来店し閉店まで居座った後、
これが最近のお約束コース。
気分は学生時代の放課後のようなノリ。

「今日どこにする?」
「ん~デニる?ガスる?ジョナる?」

「牛丼系もいいよね、朝定食的なもの色々あるじゃん。」
「だったらマックもいいなぁ~安いし。」

こんな会話をほぼ毎日のように繰り返してる今日この頃。
毎回変わる部分は最後の結論だけで選択肢はほぼ同じ。
最後の結論を出すのはいつもサトルで
僕は基本どこでもいいのでいつも黙ってついていく。

サトルが僕の家に居候していた頃は
あまり気付かなかったけども、
こいつも見た目の割に結構食うんだよね。
当時はもっと食う奴が隣にいたから霞んでただけで。

その日は結局、2人でシンプルな内装の
某安価牛丼系チェーン店で朝食。
貧乏な僕にはとても助かる店チョイスだけど
僕より収入が多そうな彼にはどうなんだろう?
僕に合わせてくれてるのかな、気を使ってくれてるとか。

朝食を終えた後、2人とも明日は休みだという話になり
サトルに「買い物に付き合って欲しい」と頼まれた。
ついでに僕の家にも泊めてくれと言っていた、
断る理由も無かったので快諾。

この時珍しく僕から
「買い物の後どっか飲みに行こうか」と誘ってた。
明日は休みだってことで機嫌が良かったのかも。

家までの帰り道はガソリン代が勿体無くて
最近大活躍中のママチャリを手で押しながら歩くことに。
その横を歩く彼はとても眠そうな顔で大きな欠伸を
何度も繰り返していたが、崩れ難い欠伸顔に嫉妬。

帰り道は昔の話で盛り上がってた。話が進む最中
「そう言えば最近あまり話してなかった」とふと思い出して
独りでこっそり充実感に浸ってた。
疲れと眠気と翌日休みのお陰で軽く変なテンション。

なんだか楽しいな、彼とはずっとこんな風に
仲良くしていけるのかな?そうだったらいいんだけどな~
帰り道に広がる見慣れたご近所景色は、
流れるようにゴールまでのカウントダウンを刻む。

独りなら寒いし眠いしで一刻も早くゴールしたいものだけど
楽しい帰り道はさ、家に帰れば終わってしまうから。
終わりが嬉しいやら寂しいやら勿体無いやら複雑な心境、
こんな感情の帰り道もかなり久し振りだった。

家に着いてふと思い出した。
もしかしてサトルが家に来るのはあの日以来?
僕らが力任せに追い出して、あれからどれくらい経った?

「サトルがうち来るの久し振りだよね。」
「そうでもないよ。」

「あれ、そうだっけ?」
「あ~もしかして、憶えてないの?!」

憶えてないの?と聞かれても憶えてないことはわかりません。
キョトンとする僕を見て呆れたのか諦めたのか
とても複雑な微笑を見せた後、彼はさっと目を逸らした。
当然僕は問い質す。

どうやら去年から今年にかけて行われた年越しパーティで
酔い潰れた僕を家まで届けてくれたのはサトルだったらしい。
確かに自分でどう帰ってきたのか憶えていないことは憶えていた。

なんとなく帰巣本能だけで上手く帰ってきたのかと思って
あまり深く考えもしなかったなぁ、
よく考えたらそうそう都合良く上手くいくワケないよね。

「マジか!お前か!そりゃどうも、ありがとう。」
「いや~それは全然いいんだけどさ~」

「ん~マジで憶えてないな、何か粗相しませんでしたか。」
「まぁ酔ってる時の話ですから。」

なにぃ!覚えてないけど何かやらかしたのか!
もう、こうやって後になってモヤモヤするの
一番嫌いなんだよ、不安になったり後悔したりさ、
今後は記憶だけは失くさないように気をつけよう。

「本当に憶えてないの?何も?」
「うん、何も。」

僕はたま~にあるんだよね、酔って記憶を失くすこと。
サトルはどんなに飲んでも酔っても記憶はちゃんと残るらしい、
酔ってる間の奇行もしっかり憶えてるって。
元々酒に弱い方でもないしね、僕と違って。羨ましい奴だ。

僕の家に入って即行、暖房を入れて衣服を脱ぎ捨て
真っ先に寝巻きになり2人揃って寛ぎモード全開に。
家主の僕同様、彼もよく知っているから手馴れたものだ。
クローゼットの中にはやっぱり彼の昔の荷物がまだあった。
彼を追い出した後、僕が纏めておいたもの。

それぞれ煙草に火を点けた後、サトルの昔の荷物を
クローゼットから引っ張り出して見せてあげた。
彼は想像以上にきちっと整頓されていた荷物に
爆笑した後、何故か「感動した」と言われた。変なの。

サトルは昔の自分の荷物を懐かしむように
手に取って眺めながら、年越しパーティ後の
僕の記憶の穴の部分を語り始めた。

「その日俺が言ったことも憶えてない?」
「一緒にいたことすら憶えていません。何言ったの?」

「俺も酔ってたし勢いで言っちゃっただけだけど、
 また一緒にここに住みたいって言った。」
「ほう、で?その時俺、何て答えた?」

「ふざけんなって言われた。」

なんていうか、自分の対応に笑ってしまった。
しかしわざわざ助けてくれた友達に
そんな言い方しなくてもいいだろうに。
泥酔してるクセにしっかりしてる自分に脱帽。
そして彼がまた少し間を開けてぽつりと言った。

「やっぱりダメ?」
「何が?」

「またここに住んじゃダメ?」
「荷物持って帰るの面倒なら送ってやろうか。」

「荷物はどうでもいい。」
「え~」

彼が今住んでる家の方が職場にも駅にも街にも
スーパーにもコンビニにも近く家賃も安く建物も新しいはず。
ハッキリ言ってわざわざここに住む意味は殆ど無いだろ。

強いて言うなら猫と暮らせることと家自体が少し広いことと
同居人が職場の同僚ではなく僕になるというだけ。
そんなに僕の料理が食いたいわけでも無いだろ、
飯作ってくれる人っていたら便利で有難いかもしれないが。

という僕の見解をたらたらと語っていたら
「もういいもういいわかった、本当のこと言うから」
と彼に勢いよく遮られた。

勢いで話を遮ったものの、急にモジモジしだした彼を見て
僕はてっきりまた借金か人間関係で揉めたのか
とりあえず引っ越さないとヤバイみたいな
そんなヘルプミー的な話を予想して黙って心の準備をしてた。

「やっぱり付き合いたい、好きになった。」

最初に耳に届いた瞬間は、言葉を理解出来なかった。
意味を持たない記号のような音の羅列でしかなくて
時が止まったように感じた。

それから少し間を置いて、徐々に自分が知ってる
日本語だと認識が始まり、言葉の意味に気付いて、
一言で言うなら動揺。

内側の小さな一点がカッと熱くなって一瞬で
全身に熱が燃え広がって、
沸々と血が煮えるような感覚。

身体は熱に縛られ動けない。
指先だけが細かく震え始め、
震えをどこかに逃がしたくて
指先はあらゆる場所を彷徨い、
落ち着きを探し求めて目は泳ぐ。

鼓動が耳に煩いぐらいクリアな音で鼓膜を刺す。
寧ろ鼓膜が鼓動してるような錯覚さえする、
全身が丸ごと心臓になったような。

こういう経験、決して多くはないけど
初めてではなかったはずなのに全然慣れないもんだね。
僕は一生絶対慣れないだろうな、
ぶっちゃけあまり好きじゃない感覚。
いかなる理由でも心中穏やかでなくなるのは好みじゃない。

動揺してる自覚は最初からちゃんとあって
何とか気を鎮めなきゃ、落ち着けなきゃ、と
そればかりを優先させていた。

サトルが畳み掛けるように何かを言おうとして
こっちはそんな話を聞く余裕も無くて
ひたすら「ちょっと待て」を連呼してた。
動揺は火を見るより明らかだっただろうね。

今だから言えるけど、彼はなかなか信じてくれなかったけど
マジこの瞬間まで全く気付かなかったし
予想もしてなかったんだよ、こんな話が出るなんて。

そして始まる、長い長い早朝会議。

テーマ:いろんなことがあるもんさ - ジャンル:恋愛

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