僕を埋め尽くす秘密
バイでリバの♂が恋愛仕事人生等に悩みながらも真面目に生きてるよ

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入院1
春と夏の間のある日。   


その日は朝からどしゃぶりの雨が降っていた。
雨水のせいか分厚い雲のせいか空気は冷えて
朝は半袖では肌寒く感じる程だった。
月日と季節と気温がミスマッチ、前日の暑さはどうした?
そんな印象から始まった一日。

その数日前からサトルは少し咳込んでいた。
以前から喉が弱いとか風邪をひいた時は
いつも最初に咳が出るとか、彼から聞いたことがあった。
だから僕も彼も「気温の急激な変化による風邪」
その程度にしか見ていなかった。

朝僕が目覚めてその30分後に彼が目覚めて
「咳が酷くて辛い」と言っていたので
買い置きの風邪薬を渡して
「今日は仕事休めば?」と養生を促した。

「どうしよっかなぁ。」
「そんな咳じゃ接客なんて無理じゃね?」

「ん~病院行って咳止め貰ってこようかな。」
「外すんげー雨降ってるぞ。」

「マジすか、じゃ面倒臭いな~家で寝てようかな。」
「そうしなよ、うちで寝てていいから。」

頭痛も腹痛も吐き気も鼻水も熱も無い、と言うので
薬を飲んだ彼にすぐベッドで横になってもらい
僕は朝食でも作ろうかと台所に篭っていた。

彼がベッドに戻ってから数十分、台所にいた僕にも
よく聞こえるくらい家中に彼の咳が響き渡っていた。
分刻みで咳が増えて酷くなってるんじゃないか?
肺炎か気管支炎みたいなことになってるんじゃないか?
僕が心配しかけた頃に事態は急変した。

「サトル~やっぱ病院行くか?」

大声で呼びかけたけど返事が無い、咳しか聞こえない。
彼が寝ている寝室まで、僕の声は絶対に届いてるはず。
様子を見に行ったら想像を越えて大変なことになっていた。

横になって休んでいる、というより布団に蹲って
手当たり次第に触れる布を強く握り締めて
青白い顔に真っ白な唇に苦痛に歪んだ表情に、
目は涙で赤く縁取られて、どう見ても咳き込んで
もがき苦しんでいるようにしか見えなかった。

「おい、大丈夫かよ!」
「息、出来ない。腹痛い。」

「息?!もう救急車呼ぶよ!お前ヤバイよ!」

こんな咳ぐらいで救急車なんか呼んじゃって
怒られないかな、熱も無さそうなんだけど。
でも辛いのは僕じゃない、彼だから。
だけど自力で来いって言われるかもしれない?

一瞬そう考えたけども、じゃあこの大雨の中
バイクの後ろに乗せて行けるか?無理っぽい。
タクシー待ってる余裕も病院探したり選んだりする余裕も
全然無さそう、もう生きてる人の顔色じゃないよ、
呼吸だから手遅れになったら死んじゃうかもしれない。

生まれて初めての119番はかなり緊張した。
自覚無かったけど自分が思っていたよりもずっと
テンパっていたんだろうな、住所と電話番号が
上手に言えなかった。いざこういう時の為に
見える場所にメモが必要だと勉強になった。

救急隊員の人はすぐ来てくれた。
でもサトルはそれどころじゃなくずっと
咳き込みながら「腹が痛い、苦しい」と言って
嗚咽の無い涙を零していた。

大の大人の男が痛みで涙流すってなかなか無いよ、
きっと今、相当痛いはず。
背中を擦ったり「救急車呼んだからもうすぐ来るよ」と
声をかけることくらいしか出来なかった。

何も出来ない自分の無力さを知ることで
全身を強く揺さ振るような焦りが僕を襲う。
どうしようどうしよう、早く何とかしろよ!と
焦る僕が僕を急かし、何の効果も無いとわかっていても
彼の背中を擦る手は止まらない。

今だからわかるけど、この時の僕は
怖くて相当混乱していたんだ。
相方が倒れてるんだから自分がしっかりしなきゃと
守れるのは自分しかいないと腹を括り奮い立たせて
表面上は平静を装っていたけどさ。

震えを表に出さないようにしていたから
指も手も声も震わせてない、しっかりさせてた。
その分精神がガタガタと小刻みに震えていたようで、
救急車に乗せられ行き先となる病院が決まった時
強烈な安堵と疲労感に押し倒されそうになった。

大切な人の病気程、怖いものは無いからね。

テーマ:男同士の恋愛 - ジャンル:恋愛

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